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【新型コロナ】ストレスが感染リスクを高める コロナ禍で幸福度が低下している人への支援が必要

 新型コロナのパンデミックの開始時にストレス・不安・うつ状態を強く感じていた人は、その後に新型コロナに感染するリスクが高いことが、英国のノッティンガム大学の研究で明らかになった。

 パンデミックの初期段階に心理的苦痛を強く感じていた人は、後に新型コロナに感染すると、より多くの症状が出て、さらには重症化するリスクが有意に高いことが示された。

 「社会やコミュニティでもっとも苦しんでいる人々が、新型コロナの感染のもっとも高いリスクにさらされている可能性があります」と、研究者は述べている。

ストレスなどの心理的な要因も新型コロナのリスクを高める

 新型コロナの拡大は世界中で、社会・医療サービス・経済に対して、過去に例のない大きな混乱をもたらした。それだけでなく、多くの人の心理的な幸福度にも影響を及ぼしている。多くの国やコホート調査で、不安やうつ病などのメンタルヘルスの問題や、孤独などメンタルヘルスの低下につながる危険因子の増加が報告されている。

 そこで、ノッティンガム大学医学部のカヴィータ ヴェダラ教授(医療科学・心理学)は、キングス カレッジ ロンドンやニュージーランドのオークランド大学の研究者とともに、ストレスなどの心理的な要因が新型コロナの感染にどう影響を及ぼしているかを調査した。

 調査の目的は、パンデミック中に心理的な幸福度の低下や社会的孤立などの困難を経験した人々が、新型コロナに感染したり、重症化するリスクが高いかどうかを調べることだ。

 調査は、縦断的前向き観察コホート研究の一環として、2020年4月~12月に行われた。研究調査を目的としたサイト「covidstressstudy.com」を訪問し、調査に同意した18歳以上の1,087人の成人を対象に、心理的要因(ストレス・不安・うつ・孤独・ポジティブな気分)に関するテストに答えてもらい、あわせて新型コロナの感染や症状などついて追跡して調査した。

新型コロナの感染対策は、心理的・社会的要因も考慮しながら策定する必要が

 人口統計学と職業的要因を考慮に入れて、回帰モデルを使い心理的要因と新型コロナの感染の関連について解析した結果、心理的苦痛の度合いが高まっている人で、新型コロナの感染と発症を経験した比率はより高いことが明らかになった。

 これまでの研究でも、社会的支援の欠如やストレスなどの心理的要因が、ウイルス性呼吸器疾患の感受性を高め、重篤な症状の増加につながることが示されている。

 「研究では、新型コロナのパンデミックがストレス・不安・うつ病の増加を促しているだけでなく、そうした心理的要因が新型コロナの感染リスクそのものを高めていることが示されました。新型コロナの感染対策は、心理的・社会的要因も考慮しながら策定する必要あります」と、ヴェダラ教授は述べている。

 「社会やコミュニティでもっとも苦しんでいる人々が、新型コロナの感染のもっとも高いリスクにさらされている可能性があります。こうした人々をどのように支援するかを考慮することは、公衆衛生政策を立てるうえで重要になります」としている。

 心理的苦痛や幸福度がウイルス感染や重症化につながるメカニズムを解明するために、さらなる研究が必要としながらも、主に次の3つが考えられるという。
▼心理的ストレスやネガティブな感情が免疫系を低下させ、ウイルス性疾患に対する保護を弱める。▼ストレスはワクチン接種による免疫応答に影響する。▼休眠状態にあった潜伏性ウイルス感染の再活性化。

 「これまでの研究でも、心理的な苦痛や脆弱性は、ウイルス性疾患の感染と発症に影響することが示されています。今後の研究では、すでに感染が確認された患者にもこの関連が認められるか、さらには重症化を防ぐためにどのような対策が考えられるかを探ることです」と、キングス カレッジ ロンドンの認知行動心理学部のトルディ チャルダー教授は述べている。

Stress associated with an increased risk of getting COVID-19, study finds (ノッティンガム大学 2022年1月12日)
Psychological Predictors of Self-reported COVID-19 Outcomes: Results From a Prospective Cohort Study (Annals of Behavioral Medicine 2022年1月3日)
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[Terahata]

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