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【新型コロナ】ワクチン2回接種後に発熱した人は、ワクチンの効果がより強い? 解熱鎮痛剤の悪影響はみられず
2022年03月09日

九州大学などの調査によると、新型コロナウイルスワクチン2回目接種後に発熱が認められた人は、そうでない人に比べ、抗体価が高い傾向があり、38度以上の高い発熱のあった人は37度未満であった人に比べ、平均約1.8倍の抗体価が認められた。
副反応出現後であれば、標準的な解熱鎮痛剤を使用しても、抗体反応への悪影響は観察されず、ワクチン接種による免疫は十分に獲得されていた。
ワクチン2回接種後に発熱する人は、ワクチンの効果がより強い?
ファイザーのmRNAワクチンは、日本で最初に認可された新型コロナに対するワクチンで、高い有効性が報告されているものの、インフルエンザワクチンなどのこれまで一般的に接種されてきたワクチンと比べると、発熱などの副反応の出現頻度が高いことが知られ、それらの症状を軽減するために解熱鎮痛剤を使用する例は多い。 しかし、副反応の程度とワクチン接種後の抗体反応の強さの関係性についてはいまだ議論があり、また解熱鎮痛剤の使用が抗体反応にどのような影響を及ぼすのかについても十分に調査されていない。 そこで九州大学などは、335人を対象に新型コロナウイルスワクチン2回接種後の抗体価を測定し、副反応の程度や解熱鎮痛剤の内服状況を調査した。 その結果、副反応の程度に関わらずワクチン2回接種で十分な抗体反応が観察されたが、ワクチン2回目接種後に発熱が認められた人は、そうでない人に比べ、抗体価がより高い傾向があり、なかでも38度以上の高い発熱がみられた人は37度未満の人に比べ、平均1.8倍の抗体価が認められた。また、副反応出現後であれば、標準的な解熱鎮痛剤を使用しても、ワクチン接種による抗体反応への悪影響は認められなかった。 「2回目接種後の副反応と高い抗体価との関連を示す今回の知見は、ワクチン接種後の発熱などの副反応の一部が、新型コロナウイルスに対する免疫獲得を反映している可能性を示唆するものです。また、その副反応を軽減するために解熱鎮痛剤を内服しても、ワクチン接種による抗体反応を大きく阻害しないと考えられます」と、研究者は述べている。 「研究結果は、副反応を恐れて、新型コロナウイルスワクチン接種を控えている方々にとって、副反応に関する正確な情報を提供し、新型コロナウイルスワクチン接種に関する認識の向上に資する可能性があります」としている。 研究は、九州大学大学院医学研究院病態修復内科学講座の赤司浩一教授、九州大学病院グローバル感染症センターの下野信行センター長、同講座の鄭湧助教、同講座の谷直樹氏と福岡市民病院の桑野博行院長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Vaccine」に掲載された。
ワクチン接種後の発熱などの副反応は、ウイルスに対する免疫獲得を反映している可能が
副反応を軽減するために解熱鎮痛剤を内服しても、ワクチン接種による抗体反応は阻害されない
副反応を軽減するために解熱鎮痛剤を内服しても、ワクチン接種による抗体反応は阻害されない

出典:九州大学、2022年
ワクチン2回目接種後に38度以上の熱が出た人の抗体価は1.8倍に
研究グループは今回、福岡市民病院職員486人(研究時点)のうち、428人の新型コロナのスパイクタンパクに対するIgG抗体(IgG(S-RBD))を測定。そのうちファイザーのmRNAワクチンを2回接種し、かつ2回目接種から十分な期間(14日以上)経過した職員を対象とした。 このうち、新型コロナの既往がある、または過去の感染が示唆される職員と、ワクチン接種前24時間以内に解熱鎮痛剤を内服した職員は、研究から除外し、研究対象は合計335人となった。 ワクチン接種後の副反応(発熱、倦怠感、頭痛、注射部位の痛みや腫れなど合計13項目)を調査し、それらの副反応に対して使用した解熱鎮痛剤の薬剤名や服用のタイミング、内服量の情報を収集、副反応の程度や解熱鎮痛剤の内服が抗体価に与える影響を解析した。 調査の結果、2回目接種後の発熱や倦怠感、頭痛、悪寒といった全身反応を生じると抗体価が高い傾向にあった。統計解析により、最終的に2回目接種後の発熱だけが抗体価と独立して相関することがわかった。発熱が強いほど抗体価が高く、2回目接種後に体温が38度以上に上昇した集団の抗体価の平均は37度未満の集団と比較して約1.8倍だった(1万3,035AU/mL vs 7,186AU/mL、p<0.001)。その傾向は性別、年齢別に層別化しても認められた。 ただし、発熱のなかった集団においても2回接種後には十分な抗体産生が認められており、発熱がないからといって十分な抗体産生が行なわれていないわけではない。
性別、年齢別での発熱と抗体価との関係

出典:九州大学、2022年
解熱鎮痛剤を使用しても十分な抗体が産生されている
解析対象となった職員のうち約45%が、ワクチン接種後に何らかの解熱鎮痛剤を内服。解熱鎮痛剤を内服しなかった集団と比較して、内服した集団の抗体価が低いということはなかった(内服なし8,304AU/mL vs 内服あり9,458AU/mL、p=0.083)。 使用された解熱鎮痛剤の種類は、アセトアミノフェンが最多で46%、次にロキソプロフェンが28%だった。使用された解熱鎮痛剤の種類による抗体価の有意差はなかった。解熱鎮痛剤の内服のタイミングごとの検討でも抗体価の有意差は認められず、副反応出現後であればワクチン接種後から解熱鎮痛剤内服までの時間は、抗体反応に大きな影響を及ぼさないことが示唆された。 研究グループは続いて、発熱の程度ごとに解熱鎮痛剤の影響を検討した。発熱の有無にかかわらず、解熱鎮痛剤を使用した集団でも十分な抗体産生が得られていた。副反応出現後であれば、標準的な解熱鎮痛剤の使用によりワクチン接種後の免疫が十分に獲得されないということはなかった。 「副反応出現後に解熱鎮痛剤を内服することは、新型コロナウイルスワクチン接種による抗体反応を阻害することなく、発熱といった副反応による苦痛を軽減できると考えられます」と、研究グループでは述べている。
解熱鎮痛剤の使用と抗体価との関係
九州大学医学部第一内科 (病態修復内科学)
出典:九州大学、2022年
福岡市民病院 感染症内科
Relation of fever intensity and antipyretic use with specific antibody response after two doses of the BNT162b2 mRNA vaccine (Vaccine 2022年3月18日)
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