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【新型コロナ】休校中に生活リズムが乱れた子供は睡眠時間が減少 夜型の生活をしている子供は要注意

 新型コロナの感染対策として、長期に学校が休校になった際に、平時より遅い時刻に起床し朝食をとっていた子供は、学校再開後に睡眠時間が減るなど、とくに睡眠への影響が大きいことが、東京大学の調査で明らかになった。

 「将来、感染症や災害などによる長期の休校が起き、その後学校が再開すると、夜型に近いタイプの子供では、睡眠習慣の変化への影響が大きくなる可能性があります」と、研究者は述べている。

学校が再開されたとき子供たちの睡眠時間は1時間短かった

 新型コロナの感染の拡大を受けて、2020年に最長で約3ヵ月の全国一斉休校が行われた。学校だけでなく、家庭でも仕事の調整などの対応に追われた人が多い。

 感染者が国内で確認されてから3年を迎え、休校が子供たちの健康にどう影響したかを検証する研究が行われている。

 東京大学の研究グループは、小中学生4,084人を対象に縦断調査を行い、学校再開後には、休校中と比べて、起床時刻が1時間早まり、睡眠時間も1時間短くなったことを明らかにした。

 とくに、休校中に起床と朝食の時刻が遅い、「夜型」の生活パターンをもっていた子供では、起床時刻、睡眠時間、清涼飲料類の摂取量の変化がより大きい傾向がみられた。

 一方、食事については、学校再開後には、チアミン、ビタミンB6、カリウム、果物類と乳製品の摂取が増え、砂糖・菓子類と清涼飲料類の摂取量が減ったものの、食事の変化は小さいことも分かった。

 食事については、新型コロナの流行下で、家族が子供たちの健康と食事に気をつかっていたために、学校の再開後も大きく変化しなかったと考えられるとしている。

 研究は、東京大学未来ビジョン研究センターの杉本南特任助教、大学院医学系研究科社会予防疫学分野の村上健太郎助教、大学院医学系研究科社会予防疫学分野の佐々木敏教授によるもの。研究成果は、「Journal of Nutritional Science」に掲載された。

夜型の子供ほど起床時刻と睡眠時間への影響は大きい

 学校は、学齢期の子供たちの生活に大きく関わっている。新型コロナの流行による長期の一斉休校中の生活習慣は、学校が再開された後の生活習慣にも影響したことが示された。

 研究グループは、一斉休校から学校が再開された直後(2020年6月)と、学校再開後(2020年7月~2021年2月)に、小中学生4,084人に対して、睡眠や食事、運動などの生活習慣などについて縦断調査を実施した。

 全体として、学校再開後は、子供たちの起床時刻は約1時間早くなるとともに、睡眠時間が約1時間短くなっていた。

 一方で、食事については、チアミン、ビタミンB6、カリウム、果物類、乳製品類で増加がみられ、砂糖・菓子類と清涼飲料類で減少がみられたものの、その他の食品・栄養素の摂取量には大きな差はみられなかった。また、睡眠習慣の変化に比べると、食事摂取量の変化は相対的に小さいものだった。

 調査で得られた一斉休校中の起床・就寝・食事の時刻パターン別にこれらの変化を分析したところ、起床と朝食の時刻が遅かったパターンの子供たちは、起床と朝食の時刻が早く、平時と同じ時刻だったパターンの子供たちに比べて、起床時刻と睡眠時間の変化がより大きく、清涼飲料類の減少幅も大きかった。

 一斉休校中も、子供たちの食事はあまり悪くなっていなかった可能性が示唆された一方で、学校の再開により、子供たちの睡眠習慣が大きく変化していたこと、とくに夜型に近い子供では変化がより顕著であったことが示された。

 「一斉休校中の学齢期の子供たちの睡眠と食事の時刻パターンの分析から、平時より著しく遅い時刻に起床し朝食をとっている子供たちがいて、そうした子供たちは、睡眠時間が短くなるほど、不健康な生活習慣をもつリスクが高いことが示されました」と、研究者は述べている。

 「将来、感染症や災害等による長期の休校が起き、その後学校が再開すると、夜型に近いタイプの子供では、睡眠習慣の変化への影響が大きくなる可能性があります」としている。

休校中も平時と同じ規則正しい生活パターンが望まれる

 研究グループは今回の調査で、対象となった小中学生に質問票(簡易型自記式食事歴法質問票を含む)を配布し、初回調査でリクルートされた1,1958人のうち、2回の調査の両方で質問票に回答し、必要な変数のそろっている4,084人の子供(8~15歳)を解析対象とした。

 就寝および起床時刻、睡眠時間、主な栄養素および食品群の摂取量を、一斉休校中と学校再開後とで比較した。さらに、潜在クラス分析から得られた一斉休校中の睡眠・食事の時刻パターンの4つのクラス間で、これらの変数の変化を比較した。

 解析対象の集団に属する個人を、統計的にクラス分けする手法である潜在クラス分析により、とくに、起床と朝食の時刻が異なる4つのパターンを見い出した。

 時刻の順に、「非常に早い(6時頃に起床、6~7時頃に朝食)」、「早い(7時頃に起床、7時頃に朝食)」、「遅い(7~8時頃に起床、8時頃に朝食)」、「非常に遅い(8~10時頃に起床、9~10時頃に朝食)」と、4つのパターンにラベル付した。

 起床と朝食の時刻が早いパターンの子供は、学校のある平時と同様の時刻に起床し朝食をとっており、遅いパターンの子供は、起床、朝食、昼食の時間帯が1~2時間以上遅くなっていた。

子供の臨時休校中の睡眠および食事の時刻パターン
小中学生4,084人を調査

出典:東京大学、2023年

東京大学大学院医学系研究科社会予防疫学分野
What happened among Japanese children from school closure due to COVID-19 after school re-opening? Changes in sleep habits and dietary intake (Journal of Nutritional Science 2023年1月23日)
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