ニュース
【新型コロナ】肥満と過体重が重症化の危険因子 人工呼吸を必要とする可能性が73%上昇
2021年05月10日

肥満と過体重が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の危険因子であることが、オーストラリアのクイーンズランド大学などの調査であらためて確かめられた。
中国、米国、イタリア、南アフリカ、オランダなど11ヵ国の18の医療機関に入院した7,244人のCOVID-19患者を調査した結果、肥満または過体重の患者は、COVID-19の転帰を悪化させるリスクが高く、人工呼吸を必要とする可能性が73%高いという結果になった。
中国、米国、イタリア、南アフリカ、オランダなど11ヵ国の18の医療機関に入院した7,244人のCOVID-19患者を調査した結果、肥満または過体重の患者は、COVID-19の転帰を悪化させるリスクが高く、人工呼吸を必要とする可能性が73%高いという結果になった。
肥満のCOVID-19患者は人工呼吸を必要とする可能性が73%高い
肥満と過体重は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を重症化させる危険因子で、該当する患者は侵襲的な呼吸補助が必要となる可能性が非常に高いことが、オーストラリアのクイーンズランド大学とマードックチルドレンズ研究所(MCRI)により明らかになった。研究成果は「Diabetes Care」に掲載された。
「肥満によるCOVID-19の疾病負荷の増加について明らかにした今回の調査結果は、肥満の複雑な社会経済的影響に対処するための戦略や、ジャンクフードなどの食品広告の制限などの公共政策を緊急に導入する必要があることを示しています」と、MCRI小児内分泌学のダニエル ロングモア氏は述べている。
「短期的に肥満に対処する措置を講じることが、COVID-19のパンデミックにすぐに影響をもたらす可能性は低いのですが、今後のウイルス性感染症のパンデミックによる負担を減らし、心臓病や脳卒中などの合併症のリスクの減少につながります」としている。
研究では、中国、アメリカ、イタリア、南アフリカ、オランダを含む11ヵ国の18の病院に入院したCOVID-19患者を調査した。18歳以上の7,244人の患者のうち、34.8%が過体重で、30.8%が肥満だった。
肥満のCOVID-19患者はそうでない患者に比べ、酸素吸入や侵襲的な人工呼吸を必要とする割合が73%高かった。過体重の患者でも、控えめではあるが同様の傾向がみられた。一方、肥満と過体重とCOVID-19による院内死亡との間に関連はみられなかった。
心血管疾患や既存の呼吸器疾患は、院内死亡のオッズ増加と関連していたが、酸素と人工呼吸器を必要とするリスクは高くなかった。糖尿病の患者では、侵襲的な呼吸補助が必要になる割合は高く、これに肥満が加わるとリスクがさらに増加することはなかった。
また、男性は女性に比べ、COVID-19が重症化し侵襲的な人工呼吸器が必要となるリスクが高かった。65歳以上の高齢者でも、酸素吸入を必要とする割合が高く、院内死亡率も高かった。
COVID-19ワクチン接種の優先順位を策定する際の参考に
「過体重または肥満が、成人のCOVID-19入院患者の病状悪化の独立した危険因子であることが、大規模な調査で示されました」と、研究を共同で主導したクイーンズランド大学化学分子生物科学部のカースティ ショート氏は述べている。
「世界人口の40%が過体重か肥満と推定されています。肥満は、代謝性心疾患や呼吸器疾患のリスクの増加、インフルエンザ、デング熱、SARSコロナウイルスなどのより重篤なウイルス性疾患など、多くの健康状態の悪化に関連しています」と指摘している。
過去の報告でも、肥満がCOVID-19重症化の重要な危険因子であることは示されていたが、そのデータのほとんどは単一サイトから収集されており、多くの地域を代表していなかったとショート氏は指摘。
「今回の研究は、COVID-19ワクチン接種の優先順位を策定する際の参考になります。WHOは現時点で、COVID-19重症化の危険因子としての過体重や肥満について高品質のデータをもっていません。得られたエビデンスは、どの高リスクグループを優先してワクチン接種をするべきかを決定するのに役立ちます」と、MCRIのディビッド バーグナー教授は述べている。
Patients who are overweight or obese at risk of more severe COVID-19(マードックチルドレンズ研究所 2021年4月16日)Diabetes and Overweight/Obesity Are Independent, Nonadditive Risk Factors for In-Hospital Severity of COVID-19: An International, Multicenter Retrospective Meta-analysis(Diabetes Care 2021年4月)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「特定保健指導」に関するニュース
- 2025年07月28日
- 日本の「インターバル速歩」が世界で話題に 早歩きとゆっくり歩きを交互に メンタルヘルスも改善
- 2025年07月28日
- 肥満と糖尿病への積極的な対策を呼びかけ 中国の成人男性の半数が肥満・過体重 体重を減らしてリスク軽減
- 2025年07月28日
- 1日7000歩のウォーキングが肥満・がん・認知症・うつ病のリスクを大幅減少 完璧じゃなくて良い理由
- 2025年07月28日
- 【妊産婦を支援】妊娠時に頼れる人の数が産後うつを軽減 妊婦を支える社会環境とメンタルヘルスを調査
- 2025年07月22日
- 【大人の食育】企業や食品事業者などの取り組み事例を紹介 官民の連携・協働も必要 大人の食育プラットフォームを立ち上げ
- 2025年07月22日
- 高齢者の社会参加を促すには「得より損」 ナッジを活用し関心を2倍に引き上げ 低コストで広く展開でき効果も高い 健康長寿医療センター
- 2025年07月18日
- 日本人労働者の3人に1人が仕事に影響する健康問題を経験 腰痛やメンタルヘルスなどが要因 働きながら生産性低下を防ぐ対策が必要
- 2025年07月18日
- 「サルコペニア」のリスクは40代から上昇 4つの方法で予防・改善 筋肉の減少を簡単に知る方法も
- 2025年07月14日
- 適度なアルコール摂取は健康的? 大量飲酒の習慣は悪影響をもたらす お酒との良い関係
- 2025年07月14日
- 暑い夏の運動は涼しい夕方や夜に ウォーキングなどの運動を夜に行うと睡眠の質は低下?