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【新型コロナ】働く人の45%が「メンタル不調」 コロナ禍でストレス増加 メンタルヘルス対応マニュアルを作成
2021年10月05日
労働者の2人に1人は精神的な健康度が低く、とくに新型コロナの拡大以降は、ストレスや悩みが増加した人は6割に上ることが、20~50代の労働者を対象に実施した調査で明らかになった。
メンタルケアサービスの利用について、「期待していない」「抵抗感が大きい」という声も多い。
また新型コロナは、多く人々にストレスを及ぼし、思春期女性への影響も大きいことが、近畿大学の調査で示された。
一方で、新型コロナにおけるメンタルヘルス問題への対応マニュアルも、精神保健相談員向けに作成されている。
メンタルケアサービスの利用について、「期待していない」「抵抗感が大きい」という声も多い。
また新型コロナは、多く人々にストレスを及ぼし、思春期女性への影響も大きいことが、近畿大学の調査で示された。
一方で、新型コロナにおけるメンタルヘルス問題への対応マニュアルも、精神保健相談員向けに作成されている。
新型コロナによりストレスや悩みが増加
NTTデータ経営研究所などの調査によると、労働者の2人に1人は精神的な健康度が低く、うつ病や不安障害などの精神疾患のリスクが上昇している。とくに新型コロナの拡大以降は、ストレスや悩みが増加した人は6割に上る。
新型コロナの拡大以降にストレスや悩みが増加した人は、長く企業に勤め、テレワークを定期的に行える環境におり、同居者もいる40~50代だった。生活が安定しており、社会的に成功しているようにみえる人でも、ストレスや悩みが増加している可能性がある。
さらに、そうした人の相談窓口の利用率は3割と低く、当事者に相談への抵抗感があることや、解決方法が分からない、相談窓口そのものを認知していないなどの課題が浮き彫りとなった。
調査は6~7月に、50人以上の事業所で働く20~50代の男女を対象に実施し、1,022人から有効回答を得た。世界保健機関(WHO)が作成した質問表である「WHO-5精神的健康状態表」を使用し、精神的な健康状態を測定した。
その結果、精神的な健康度が低いとみなされる合計点数が13点未満の人は45.3%に上り、うつ病などの精神疾患リスクが高いことが分かった。うち59.8%はコロナ禍以降で「ストレスや悩みが増えた」と回答した。
メンタルケアサービスに「期待していない」「抵抗感が大きい」
健康経営の一環で、多くの企業はメンタルケアサービスを提供しており、ストレスチェックテストの実施や相談窓口の設置などして対策しているが、実際には従業員は自身のメンタル不調やストレスを打ち明けることのデメリットを懸念し、正直に回答したり、利用したりすることに抵抗を感じている可能性が高いという。
ケアが必要な状況にもかかわらず、サービスを適切に利用できない「サービス・ギャップ」が生じる心理的な理由として、「メンタルヘルスケアサービスを利用してもメリットや効果が得られるとは思えない」という期待感のなさや、「サービスを利用すること自体にリスクや不安、懸念を感じる」という抵抗感が大きいことが示された。
この調査でも、精神的健康度が低い人のうち、新型コロナの拡大以降にストレスが増加した群と、ストレスの増加はみられない群とで比較したところ、ストレス増加群はストレスチェックテストや社内外の相談窓口を認知しているものの、回答したり利用したりすることへ抵抗を感じていることが分かった。さらに、ストレスの増加有無にかかわらず、6~7割が社内外の相談窓口を利用したことがないことが明らかになった。
抵抗を感じる理由として、社内の相談窓口に関しては「面談の内容が周囲に漏れるのが不安だから」(24.4%)、「面談でどのようなことをするのか分からないから」(23.1%)という回答が多く、社外の相談窓口に関しても「そもそも社外のカウンセラーなどの専門家が何かよく分からないから」(24.4%)、「相談窓口でどのようなことをするのか分からないから」(15.6%)という回答が多かった。
コロナ禍でストレスが増加したメンタル不調者で、サービスを適切に利用できない「サービス・ギャップ」が目立つ
出典:NTTデータ経営研究所、2021年
コロナ禍でのメンタルヘルス問題への対応マニュアルを作成
コロナ禍でストレスが拡大しているのを受け、九州大学と国立精神・神経医療研究センターが、新型コロナでのメンタルヘルス問題への対応マニュアルを作成した。
精神保健相談員向けの内容で、リモート(電話やメール)相談の受け方、相談内容に応じた対応を行うためのスクリーニング方法、サイコロジカルファーストエイド(心理的応急処置介入)の方法、うつや不眠への認知行動療法による介入などを、分かりやすく解説している。
また、実際の対応場面を模擬的に紹介する付属動画も提供する。研究グループが2020年1~10月に実施した調査によると、精神保健福祉センターに新型コロナに関連して、感染による差別、人間関係、仕事や経済的な問題、精神的な問題など多岐にわたる相談が寄せられた。
マニュアルはリモート相談の受け方やスクリーニングの方法、面接の進め方を分かりやすく解説し、付録の動画で面接の実施方法について視覚的にも学べるようになっている
コロナ禍で女子高校生の月経痛や月経前症候群(PMS)も悪化
新型コロナにまつわるストレスにより、女子高校生の月経痛や月経前症候群(PMS)が悪化していることが、近畿大学の調査で判明した。
新型コロナは、世界中の人々に大きなストレスを及ぼし、思春期女性への影響も大きい。今回の調査で、コロナ禍での思春期女性の健康管理も適切に行う必要があることが示された。
月経前症候群は、月経前の3~10日のあいだ続く精神的あるいは身体的症状。イライラ・おちこみ・不安感といった精神症状と、腹部膨満感・乳房症状といった身体症状があらわれる。
月経痛や月経前症候群は、ストレスによって悪化し、女性の生活の質(QOL)を下げることがあるが、コロナ禍でも、PTSD症状(心的外傷後ストレス障害)を示した例が5.6%でみられたという。
月経前症候群やPTSD症状は、まわりで気付くのは難しい
研究グループは、新型コロナの第3波が到来していた2020年12月に、2つの高校の女子生徒1,351人を対象に、月経周期や初経などの月経の状態、月経前の精神・身体症状や月経痛に関する重症度、コロナ恐怖尺度、コロナへのPTSD症状を評価する自記式アンケート調査を実施した。
月経周期が正常な生徒でも、新型コロナへのPTSD症状を示す例が5.6%に上り、PTSD症状がある生徒では、新型コロナへの恐怖感が強く、前年に実施した調査に比べ、月経痛や月経前症候群の重症度も高いことが分かった。
さらに、「月経痛」や「コロナに対するPTSD症状」がそれぞれ独立して、月経前症候群の増悪因子となることが明らかになった。
研究は、近畿大学東洋医学研究所の武田卓所長を中心とした研究グループによるもの。研究成果は医学誌「Tohoku Journal of Experimental Medicine」に掲載された。
「PMSやPTSD症状は生徒自身やまわりの教育関係者での認知が難しいことから、表面にあらわれやすい月経痛を手がかりに、背後に隠れている可能性があるこれらの症状に対しても、十分配慮する必要性があります」と、研究グループでは述べている。
NTTデータ経営研究所新型コロナウイルス禍におけるメンタルヘルス問題への対応マニュアルを作成(国立精神・神経医療研究センター 2021年9月30日)
近畿大学東洋医学研究所
Association between premenstrual symptoms and posttraumatic stress symptoms by COVID-19: A cross-sectional study with Japanese high school students(Tohoku Journal of Experimental Medicine 2021年9月28日)
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