ニュース
【新型コロナ】妊婦の感染は重症化しやすい? 妊婦のCOVID-19患者の疫学的・臨床的な特徴を解明
2022年01月25日

新型コロナに感染して発症した妊婦では、中等症から重症の患者の割合が比較的高いことが、日本の妊婦を対象とした大規模調査で明らかになった。
国立成育医療研究センターなどが、妊婦の新型コロナによる入院例の疫学的・臨床的な特徴を、日本最大の新型コロナ関連のレジストリのデータにより解析したもの。
そうした患者では、なんらかの基礎疾患があったり、妊娠中期(14週〜)以降の患者が多いことも判明した。妊婦の感染経路は家族からの感染が多いことも分かった。
妊婦が感染すると重症化しやすい可能性
研究は、国立成育医療研究センター感染症科の庄司健介医長と国立国際医療研究センター国際感染症センター・AMR臨床リファレンスセンター応用疫学研究室の都築慎也医長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Clinical Infectious Diseases」に掲載された。 妊婦の新型コロナ感染・発症の特徴について、大規模に調査した研究は日本初では今回がはじめて。これまでの海外での検討では、妊婦の新型コロナは、非妊婦に比べ重症化しやすいかについて、重症化しやすいという報告と、変わらないという報告とがあり、はっきりとした答えは出ていなかった。また、妊婦の新型コロナの中で、どのような患者がより重症になりやすいのかについても情報が限られており、結論は出ていない。 そこで研究グループは、国立国際医療研究センターが中心となり運営されている日本最大の新型コロナ関連のレジストリ「COVID-19 Registry Japan(COVIREGI-JP)」のデータを解析した。 「妊婦と非妊婦の新型コロナの疫学的・臨床的な特徴の比較」「妊婦での新型コロナの中等症から重症に関連する要因を探索」という2つの目的について、後ろ向きの観察研究を行った。 研究は、2020年1月~2021年4月の期間中に3万7,138 人の患者情報が登録され、そのうち研究対象となったのは15歳以上~45歳未満の女性患者は4,006人だった。そのうち、妊婦は254人、非妊婦は3,752人だった。 これら対象患者の患者背景、重症度、治療内容などのデータを集計・分析。とくに、妊婦と非妊婦の患者背景を「傾向スコアマッチング解析」という手法を用いて揃えたうえで、重症度を比較した。また、妊婦患者を軽症群と、中等症から重症群に分け、多変量解析という手法で中等症から重症に関連する要因を探索した。
新型コロナのレジストリのデータを解析

出典:国立成育医療研究センター、2022年
関連情報
基礎疾患や妊娠中期により妊婦の重症化は増える
その結果、妊婦は非妊婦に比べ、家庭内での感染が多いことが判明した。妊婦の39.4%、非妊婦の19.8%が、家庭内での新型コロナの接触があるという結果になった。 また、集中治療室に入院した患者のうち、妊婦は2.4%(6人)、非妊婦は1.2%(45人)、死亡例は妊婦0.4%(1人)、非妊婦は0.1%(3人)だった。 妊婦と非妊婦の新型コロナの比較では、妊婦(187人)と非妊婦(935人)を比較した。その結果、中等症~重症の割合は、妊婦9.6%、非妊婦4.9%(P=0.0155)となり、「妊婦の方がより重症化している可能性」が示唆された。
中等症~重症の割合は妊婦で多い
妊婦がより重症化している可能性がある
妊婦がより重症化している可能性がある

出典:国立成育医療研究センター、2022年
妊婦の新型コロナ中等症~重症に関連する要因については、妊婦患者254人を、中等症~重症(30人)と軽症(224人)に分け、その背景を比較。
その結果、▼中等症~重症群の方が軽症群に比べて妊娠中期(14週〜)以降の患者の割合が高い(93.1% vs 71.2%)、▼なんらかの基礎疾患のある患者の割合が高い(16.7% vs 4.9%)」ということが明らかになった。
多変量解析でも、中等症~重症群と軽症群の比較とでは、妊娠中期以降のオッズ比(95%信頼区間)は5.295(1.215-23.069、P=0.026)、何らかの基礎疾患が存在する場合のオッズ比は3.871(1.201-12.477、P=0.023)と、それぞれ有意に中等症~重症と関連していることがわかった。
妊娠中期から後期にかけて新型コロナが重症化する妊婦が多い
妊婦は家庭内での感染が多い
妊婦は家庭内での感染が多い

出典:国立成育医療研究センター、2022年
今回の研究により、日本の妊婦新型コロナの入院症例の実態が明らかにされた。今後、妊婦に対するワクチンを含む予防や治療について考えていくうえで、研究結果が重要な役割を果たすことが期待される。
「今回の研究はデルタ株やオミクロン株の流行が始まる前のデータであるため、今後デルタ株やオミクロン株などの変異株が妊婦に与えている影響を検討する際の比較対象としても貴重なデータであると考えられます」と、研究グループは述べている。
COVID-19 Registry Japan (COVIREGI-JP)国立成育医療研究センター感染症科
国立国際医療研究センター国際感染症センター
Clinical characteristics and outcomes of COVID-19 in pregnant women: a propensity score matched analysis of the data from the COVID-19 Registry Japan (Clinical Infectious Diseases 2022年1月17日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「特定保健指導」に関するニュース
- 2025年06月10日
- 【アプリ活用で運動不足を解消】1日の歩数を増やすのに効果的 大阪府健康アプリの効果を8万人超で検証
- 2025年06月09日
- 【睡眠改善の最新情報】大人も子供も睡眠不足 スマホと専用アプリで睡眠を改善 良い睡眠をとるためのポイントは?
- 2025年06月09日
- 健康状態が良好で職場で働きがいがあると仕事のパフォーマンスが向上 労働者の健康を良好に維持する取り組みが必要
- 2025年06月09日
- ヨガは肥満・メタボのある人の体重管理に役立つ ヨガは暑い夏にも涼しい部屋でできる ひざの痛みも軽減
- 2025年06月05日
- 【専門職向けアンケート】飲酒量低減・減酒に向けた酒類メーカーの取り組みについての意識調査(第2回)
- 2025年06月02日
- 【熱中症予防の最新情報】職場の熱中症対策に取り組む企業が増加 全国の熱中症搬送者数を予測するサイトを公開
- 2025年06月02日
- 【勤労者の長期病休を調査】長期病休の年齢にともなう変化は男女で異なる 産業保健では性差や年齢差を考慮した支援が必要
- 2025年06月02日
- 女性の月経不順リスクに職場の心身ストレスが影響 ストレスチェック活用により女性の健康を支援
- 2025年06月02日
- 自然とのふれあいがメンタルヘルスを改善 森が人間の健康とウェルビーイングを高める
- 2025年05月30日
- 都民の健康意識は高まるも特定健診の受診率は66% 「都民の健康と医療に関する実態と意識」調査